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山形地方裁判所 昭和60年(行ウ)1号 判決

原告

小野幸三

外六名

右原告ら訴訟代理人弁護士

加藤實

黒坂弘

佐藤欣哉

高橋敬一

外塚功

沼澤達雄

三浦元

脇山淑子

右訴訟復代理人弁護士

縄田政幸

被告

山形県知事

板垣清一郎

右訴訟代理人弁護士

古澤茂堂

高山克英

吉村和彦

被告指定代理人

日野雅夫

外六名

主文

本件訴を却下する。

訴訟費用は原告らの負担とする。

事実

第一  当事者の申立

一  原告ら

(一次的申立)

被告が別紙目録一のとおり出資による権利につき管理を怠つている事実の違法であることを確認する。

訴訟費用は被告の負担とする。

(二次的申立)

被告が別紙目録二のとおり出資による権利につき管理を怠つている事実の違法であることを確認する。

訴訟費用は被告の負担とする。

(三次的申立)

被告が別紙目録三のとおり出資による権利につき管理を怠つている事実の違法であることを確認する。

訴訟費用は被告の負担とする。

二  被告

(本案前の申立)

本件訴をいずれも却下する。

訴訟費用は原告らの負担とする。

第二  請求原因

一  当事者

(一)  原告ら七名は肩書地に居住する山形県の住民である。

原告らは、次項において述べるとおり、昭和六〇年三月二六日、財団法人山形美術館(以下「山形美術館」という。)及び財団法人山形県観光開発公社(以下「観光開発公社」という。)に対する山形県の出資金が県の公有財産である「出資による権利」として被告において管理されているはずであるにもかかわらず、右各財団法人の基本財産には、その一部しか組み入れられていないことに重大な違法があり、右出資金に基づく山形県の公有財産である「出資による権利」の財産管理を怠つている事実の違法確認を求め、山形県監査委員に住民監査請求手続をとつた。これに対して同監査委員は昭和六〇年五月二三日付で監査の結果として原告らの請求には理由がないと通知した。

(二)  被告は、地方自治法一四八条、一四九条、二三八条の二に基づき、山形県の公有財産たる「出資による権利」を管理する職務を負つている。

二  住民監査請求の経過と結果

(一)  財産管理を怠る事実と監査請求に至る経緯。

1 山形美術館(館長兼理事長服部敬雄)は昭和三七年一〇月山形県教育委員会に設立許可申請し、同月設立許可された。山形県は昭和三七年県議会で五〇〇万円、昭和三八年県議会で三五〇〇万円を山形美術館に対する出資金として各々予算可決し、昭和三七年一二月から昭和三八年四月までの間二回にわけて右金員を同美術館に各出資した。

然るに、山形美術館の基本財産には、山形県の出資金四〇〇〇万円のうち五〇〇万円しか組み入れられなかつた。

2 山形美術館は昭和五七年一二月二〇日同美術館の理事会・評議員会において工費六億五〇〇〇万円の増改築事業を決議し、山形県に二億一八〇〇万円、山形市に一億九〇〇万円の補助金支出を要請し、これを受けて山形県及び山形市は右金員の補助金支出を予算可決した。ところが、昭和五九年五月三一日に至り、突如同美術館の理事会において増改築の計画を変更し、工費一六億五〇〇〇万円の三階建全面新築計画を決定し、前記補助金支出の要請を撤回し、改めて県及び市に各々五億五〇〇〇万円の補助金支出を要請するに至つた。

県民の多数は右補助金要請の経過に驚くと共に、同美術館の理事長の経営する一営利企業グループによつて公益法人たる同美術館がほしいままに運営され、同美術館の収蔵品が右営利企業グループに、長期にかつ私的に利用されている等の重大な疑惑があるとして昭和五九年七月七日地方自治法七五条に基づく直接監査請求が山形県監査委員に提出された。

特に、右直接請求では、前記のとおり同美術館に対する山形県の出資金が同財団法人の基本財産に全額組み入れるべきことは地方自治法上明白なのに五〇〇万円しか組み入れられていないのは重大な違法事実である旨指摘したが、県監査委員の監査結果はその点の判断を回避した。

3 そこで、原告らは、前記一の(一)記載のとおり、山形美術館に対する山形県の出資金四〇〇〇万円が、昭和五八年度歳入歳出決算書において明記されているとおり県の公有財産である「出資による権利」として管理されているはずであるにもかかわらず、五〇〇万円しか同美術館の基本財産に組み入れられず放置されていることは、被告がその財産管理を怠つているとして住民監査請求をしたものである。

4 更に、原告らは右山形美術館と同じく観光開発公社においても被告の財産管理を怠る違法事実があるとして同時に住民監査請求を行つた。即ち、山形県は観光開発公社に対して昭和三九年四月に二五〇万円、同四三年一一月に一七〇〇万円、同四四年一一月に七〇〇万円、同四七年四月に五〇〇〇万円を出資金として出資したが、山形美術館同様山形県の出資金七六五〇万円が、昭和五八年度歳入歳出決算書において明記されているとおり、県の公有財産である「出資による権利」として管理されているはずであるにもかかわらず、金五〇〇万円しか観光開発公社の基本財産に組み入れられず、放置されており、このことは被告がその財産管理を怠つていると主張した。

付言すると、昭和四七年四月山形県が観光開発公社に出資した五〇〇〇万円の内二五〇〇万円は、出資直後に同年三月まで右観光開発公社の会長であつた服部敬雄の経営する山形グランドホテルにそのまま出資されていた事実があつた。

(二)  住民監査の結果

監査委員は、原告らの住民監査請求に対して昭和六〇年五月二三日、請求に理由がないとの監査結果を公表、通知した。

その要旨は、県の公有財産である「出資による権利」として前記出資金が管理されるべきであることに対する判断を回避しながら、出資金が「その対象を特に基本財産に限定する法令の明文の規定はない」として基本財産に組み入れられていないことを容認するものであつた。

三  被告の怠る事実の違法である理由

(一)  財団法人における基本財産の意義

財団法人は、金銭等を寄附提供しあつて一定の財産を設定し、この物的財産に法人格を与え、その活動を認められるものである。

この物的財産が基本財産であり、財団法人の中核をなすもので、その基本財産が生み出す果実をもつて本来財団法人の運営がなされるものである。

従つて、財団法人における基本財産は当該財団法人の存亡を左右する中核であるから、山形県は、文部省許認可臨時措置令及び同省関係許認可等臨時措置令施行規則を受け、①民法第三四条法人の設立及び監督に関する規則②公益法人の設立許認可基準を制定し、基本財産の充実及び処分に厳しい制約を付している。

(二)  地方自治法上の「出資による権利」と財団法人における「基本財産」

1 財団法人における「基本財産」は地方自治法上の「資本金、基本金その他これらに準ずるもの」(同法施行令一四〇条の三、一五二条)にあたることはいうまでもない。

地方自治体が右基本財産に出資した場合、その出資金が財団法人の基本財産の四分の一以上のときには、監査委員はその財団法人の「出納その他の事務の執行で当該財政的援助に係るもの」を監査する権限を有することになる(地方自治法一九九条、同法施行令一四〇条の三)。

「出資金がその財団法人の基本財産の二分の一以上のときは、県知事はその財団法人に対して調査権・措置権を有する」(地方自治法二二一条、同法施行令一五二条)と共に、毎事業年度にその財団法人の「経営状況を説明する書類」を議会に提出する義務を負うことになる(地方自治法二四三条の三)。

2 基本財産と出資金が右のような関係にあることから、地方自治法二三八条では、右出資金が地方自治体の「所有に属する財産」―「公有財産」である「出資による権利」(同条三項により「普通財産」とされている)として管理されることになるのである(同条一項七号)。そして、その普通財産の管理及び処分についても一定の制約が付されることになる(同法二三八条の五)。

(三)  山形県の本件出資金は基本財産に組み入れられなければならない。

1 前項の論述から明らかなとおり、本件の場合、山形県が、山形美術館及び観光開発公社に対して「出資金」費目で支出し、右「出資による権利」として県の公有財産―普通財産に掲げている以上、県は、右二つの財団法人に対して、「基本財産」に組み込ませておかなければならないものである。

2 「出資金」と「補助金」の関係からも右の結論は正当である。

地方公共団体が第三者に公金を拠出する場合として出資金と補助金がある。

補助金の場合は公有財産としての性質は失われ、補助事業者に対して完全に権利が移転する。それでも山形県補助金等の適正化に関する規則によれば補助事業者等は補助事業等による取得した財産(不動産や機械)を知事の承認を得ないで処分する場合は耐用年数を勘案して補助金の全部又は一部を返還しなければならないものとされている。これは補助金により取得した財産でも処分自体は自由であるものの補助金支出目的に従つて事実上制約を受けるのである。

他方、出資金の場合は、地方自治体の「出資による権利」―公有財産として留保される。その出資金が財団法人の普通財産―運用財産として自由に費消されながら、自治体から何らの監査、監督の対象ともされないとすることは、補助金以下の軽易な扱いが許容され、公金支出である性格をないがしろにするものとなり、その論理の誤りは明白である。

(四)  被告が財産管理を怠つていること

1 被告は、地方自治法一四八条、一四九条により県の財産を管理すべき職務を負い、同法二三八条の二において公有財産の調査等の総合調整権を有している。従つて被告は財団法人に対する出資金を「出資による権利」として適正に管理する職務がある。

2 前述のとおり昭和五九年三月末までの決算である昭和五八年度県歳入歳出決算書で「出資による権利」として山形美術館に対する四〇〇〇万円、観光開発公社に対する七六五〇万円の出資金を公有財産としている以上被告はその財産を管理すべき義務を負つている。

然し、右各財団法人の基本財産には各々五〇〇万円しか組み入れられていないのであるから財産管理を怠る重大な違法事実が存在することは明らかである。

四  結論

よつて地方自治法二四二条の二、一項三号に基づき被告に対して一次的申立のとおり、これが容れられないときは二次的、三次的申立のとおり怠る事実の違法確認を求める。

第三  被告の本案前の主張

地方自治法二四二条の二、一項三号の、怠る事実の違法確認の請求は、地方公共団体職員による職務懈怠の違法を確認することによつてその違法状態を除去させ、もつて地方公共団体の財務会計上の公益を擁護することを目的としたものであるから、その請求が適法であるためには、対象となる怠る事実に対応する作為義務が現存しなければならず、その職務懈怠が過去の事実であつて、不作為の違法状態を除去するための作為義務を履行する余地が無い場合はその違法確認を求める請求は不適法である。

これを本件についてみるに、被告には本件出資金に関し各財団法人に対して法的拘束力を生じるような財務会計上の作為義務が生じる余地はないし、原告らの二次的申立、三次的申立に掲げられた作為義務が発生したとしても、これら被告の各財団法人に対する請求権は、山形美術館については昭和三八年四月から一〇年を経過した昭和四八年四月の経過により、観光開発公社については昭和四七年四月から一〇年を経過した昭和五七年四月の経過をもつていずれも消滅時効が完成し各請求権を行使し得ないから、作為義務は現存しないのである。

また、前記請求が適法であるためには、作為義務を怠ることによつて損害の発生することが必要であるが、県の出資金が財団法人の基本財産に組み込まれているかどうかは県の財務会計上の利益とは直接関係が無く、財団法人に対する出資自体の財産的価値に疑問があり、出資額と財団法人の基本財産額との間に差異があるからといつてそれが県の損害とはならない。

以上のように原告らの本訴請求は不適法であるから、却下せられるべきである。

第四  被告の主張に対する原告らの反論

一  怠る事実に対応する作為義務が具体的に特定されなくとも、財産管理状態の放置を是正すべき何らかの措置が裁量的にせよ存する限りは本訴請求を適法とすべきものである。

二  出資による権利は物権的権利であり、出資金を基本財産に組み入れるよう請求する権利も物権的請求権であるから、消滅時効にかかることはない。また仮に消滅時効にかかるとしても、相手方が援用しないうちは権利が消滅することはない。

三  本件における損害は、山形県が各財団法人に対し有している出資による権利が、各財団法人において出資による権利として認められていない額すなわち山形美術館においては三五〇〇万円、観光開発公社においては七一五〇万円である。

第五  証拠〈省略〉

理由

一〈証拠〉を総合すると、山形美術館は昭和三七年一〇月山形県教育委員会に設立許可申請し、同月設立許可されたこと、山形県は昭和三七年県議会で五〇〇万円、昭和三八年県議会で三五〇〇万円を山形美術館に対する出資金として各々予算可決し、昭和三七年一二月から昭和三八年四月までの間二回にわけて右金員を同美術館に出資したこと、山形美術館はこの四〇〇〇万円の出資金のうち五〇〇万円を基本財産に組み入れ、三五〇〇万円は建物の建設資金に費消したこと、以上の事実が認められる。

そして、〈証拠〉によれば、財団法人山形美術館寄附行為においては、法人の資産を基本財産と普通財産に分け、基本財産とは財産目録のうち基本財産の部に記載する資産及び将来基本財産に編入される資産と、また普通財産はそれ以外の資産と規定し(第五条)、その財産目録の基本財産の部に「一金一〇〇〇万円、内訳、山形県寄附金五〇〇万円、山形県総合学術調査会五〇〇万円」と記載されていること、基本財産中現金は定期預金か確実な有価証券に替えること、基本財産は、やむを得ない理由がありかつ主務官庁の同意がある場合にその一部を処分する以外は、処分、貸付、担保供与などしてはならない旨規定し(第六および第七条)、また、右寄附行為には、法人に寄附された金員を基本財産、普通財産のいずれに組み入れるかについて寄附者の指定がある場合にはその指定に従う旨の規定もある(第五条四項)こと、以上の事実が認められるから、山形美術館の現有基本財産は現金一〇〇〇万円であり、基本財産は法人に留保しておくものであつて、費消してはならないものであるということができ、また、基本財産、普通財産のいずれに組み入れるかについて寄附者の指定に従わなかつた場合には寄附行為の違背となるものである。

更に、前出甲第五号証の一によれば、山形県から山形美術館に出資された四〇〇〇万円について同美術館が発行した昭和三八年四月八日付出資金証書には、四〇〇〇万円を美術館出資金として受領したことのほかに、「なお基本財産の処分、資産の管理、残余財産の処分については寄附行為(裏面記載)の定めに従い処理します」との記載があり、その裏面に基本財産処分禁止に関する寄附行為七条の文言が記載されていることが認められるから、山形県は四〇〇〇万円の出資にあたつてこれを基本財産に組み入れるよう指定し山形美術館はこれを承諾したものと推定するのが相当である。

そうすると、同美術館がこのうち五〇〇万円のみを基本財産に組入れて残り三五〇〇万円を建築資金に費消したのは寄附行為違反の行為であるということができる。

二ところで、山形県が山形美術館に対し右のように四〇〇〇万円を基本財産に組み入れるよう目的を指定して出資した行為の性質は、使途を限定した負担付贈与と解される。従つて山形県は、山形美術館が指定に違反した場合、負担の履行の請求即ち三五〇〇万円を基本財産に組み入れるよう山形美術館に請求するかまたは贈与を一部解除して三五〇〇万円の返還を求め得ることとなる。もとより、山形県と山形美術館との関係において山形県がかかる権利を行使するか否かは自由であるが、公金の支出という行政行為の面においてみるときは、用途を指定して支出した公金が用途以外に使用されたことを放置し得るものでなく、これが是正の措置を講じ得るのにこれをしないことは行政上なすべき行為を怠つたものということができる。前記認定のように、山形県は出資金が指定された用途に供されなかつたことに対し措置をとり得る権利を有しながらこれを行使しなかつたのであり、これが県知事の懈怠にあたるとする原告らの主張はその限りにおいては正当と認められるが、それがただちに地方自治法二四二条の二、一項三号にいう「怠る事実の違法」に該当するわけではなく、右条項に該当するためには当該懈怠の行為が財務管理上のものでなければならない。ところで、地方自治法二三八条一項七号の「出資による権利」とは出資したことによつて取得する権利(社員権、持分権)そのものを指し、出資契約上の履行請求権は含まれないと解すべきである。従つて、県知事において前述のように負担付贈与契約を解除しこれによつて山形県に原状回復請求権を発生せしめたのであればこれら権利の管理が財務管理上のものとなるのであるが、解除権を行使するか否かあるいは、三五〇〇万円を基本財産に組入れるよう請求するか否かは行政上の判断に属する行政管理上のものであつて、財務管理上のものでなく、出資によつて取得した権利でもないというべきである。

従つて、山形県から出資を受けた山形美術館がその全額を基本財産に組み入れなかつたことにつき被告が対応すべき措置を有しながらこれを行使しなかつたことをもつて財産の管理を怠る違法があるとしてその確認を求める本訴請求は不適法である。

三山形美術館に対する出資金につき右に認定、判断したところは観光開発公社に対する出資金についても同様であり、この出資金に関する本訴請求も不適法である。

なお、原告らは、具体的作為義務毎に訴訟上の請求があるとの前提で第一次ないし第三次の申立をしているが、これは攻撃防禦方法と解すべきであるから、原告らの申立は、山形美術館に対する出資金および観光開発公社に対する出資金につき各一個の本訴請求と解すべきである。

四以上のとおり、原告らの本件訴は不適法であるからこれを却下することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条、九三条に従い、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官齋藤清實 裁判官小野田禮宏 裁判官永野圧彦)

別紙別紙目録一

(一) 山形県が財団法人山形美術館(館長兼理事長服部敬雄)に対して昭和三七年一二月から昭和三八年四月までの間金五〇〇万円と金三五〇〇万円を二回にわけて合計金四〇〇〇万円出資し、被告山形県知事が昭和五九年三月三一日現在、右出資金四〇〇〇万円を公有財産である「出資による権利」として管理しているのであるから、右出資による権利に計上されている金額と右財団法人の基本財産の金額とを一致させる義務があるにもかかわらず、右財団法人の基本財産には金五〇〇万円しか存在せず、不一致のまま放置していること。

(二) 山形県が財団法人山形県観光開発公社に対して、昭和三九年四月金二五〇万円、昭和四三年一一月金一七〇〇万円、昭和四四年一一月金七〇〇万円、昭和四七年四月金五〇〇〇万円の合計七六五〇万円出資し、被告山形県知事が昭和五九年三月三一日現在、右出資金七六五〇万円を公有財産である「出資による権利」として管理しているのであるから、右出資による権利に計算されている金額と右財団法人の基本財産の金額とを一致させる義務があるにもかかわらず、右財団法人の基本財産には金五〇〇万円しか存在せず、不一致のまま放置していること。

別紙目録二

(一) 山形県が財団法人山形美術館(館長兼理事長服部敬雄)に対して昭和三七年一二月から昭和三八年四月までの間金五〇〇万円と金三五〇〇万円を二回にわけて合計金四〇〇〇万円出資し、被告山形県知事が昭和五九年三月三一日現在、右出資金四〇〇〇万円を公有財産である「出資による権利」として管理しているのであるから、右出資による権利に計上されている金額と右財団法人の基本財産の金額とを一致させる義務があるから、被告山形県知事は右財団法人に対して、その支出目的である出資目的に従つて金四〇〇〇万円をその基本財産に組み入れさせなければならないにもかかわらず、右財団法人の基本財産には金五〇〇万円しか存在せず、不一致のまま放置していること。

(二) 山形県が財団法人山形県観光開発公社に対して、昭和三九年四月金二五〇万円、昭和四三年一一月金一七〇〇万円、昭和四四年一一月金七〇〇万円、昭和四七年四月金五〇〇〇万円の合計七六五〇万円出資し、被告山形県知事が昭和五九年三月三一日現在、右出資金七六五〇万円を公有財産である「出資による権利」として管理しているのであるから、右出資による権利に計算されている金額と右財団法人の基本財産の金額とを一致させる義務があるから、被告山形県知事は右財団法人に対して、その支出目的である出資目的に従つて金七六五〇万円をその基本財産に組み入れさせなければならないにもかかわらず、右財団法人の基本財産には金五〇〇万円しか存在せず、不一致のまま放置していること。

別紙目録三

(一) 山形県が財団法人山形美術館(館長兼理事長服部敬雄)に対して昭和三七年一二月から昭和三八年四月までの間金五〇〇万円と金三五〇〇万円を二回にわけて合計金四〇〇〇万円出資し、被告山形県知事が昭和五九年三月三一日現在、右出資金四〇〇〇万円を公有財産である「出資による権利」として管理しているのであるから、右出資による権利に計上されている金額と右財団法人の基本財産の金額とを一致させる義務があるにもかかわらず、右財団法人の基本財産には金五〇〇万円しか存在していないので、被告山形県知事は右財団法人に対して、出資目的外使用している金三五〇〇万円を山形県に返還させるべき義務を負いながら、この返還請求をせず、不一致のまま放置していること。

(二) 山形県が財団法人山形県観光開発公社に対して、昭和三九年四月金二五〇万円、昭和四三年一一月金一七〇〇万円、昭和四四年一一月金七〇〇万円、昭和四七年四月金五〇〇〇万円の合計七六五〇万円出資し、被告山形県知事が昭和五九年三月三一日現在、右出資金七六五〇万円を公有財産である「出資による権利」として管理しているのであるから、右出資による権利に計算されている金額と右財団法人の基本財産の金額とを一致させる義務があるにもかかわらず、右財団法人の基本財産には金五〇〇万円しか存在していないので、被告山形県知事は右財団法人に対して、出資目的外使用している金七一五〇万円を山形県に返還させるべき義務を負いながら、この返還請求をせず、不一致のまま放置していること。

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